約2か月前に、スイス現地のTVで、「自然が人間に与える影響」というテーマの番組を流していて、専門家の話も交えた内容が興味深かったので、ここにご紹介します。
「1日2時間森へ行き、自然に触れると、健康にいい。」、というのは、日本でも言われていて、時々、スイスの現地新聞でも、そのまま、森林浴=Shinrinyokuという言葉(日本語がそのまま使われている)を見かけます。
そのTV番組の中で、その森林浴効果を欧州の例だけではなく、日本人の千葉に住むある教授が、1日2時間森へ行くのは健康に良い、ということを立証する調査が映されていて、実際に、日本の森林浴教室についても紹介されていました。
スイスにおける森との触れ合いについて少し書くと、例えば、ここスイスでは、幼稚園児から高校生まで、時々森に行って、授業を行っています。
幼稚園に至っては、ほぼ森の中にあったり、森に近い幼稚園も実際にあります。
また、幼児の子供向けには、森へ行って遊ばせてくれる、森林子供グループをオーガナイズしていて、子供達が森の自然に触れて、そこで遊んだり、時には、火を起こして、お昼を食べさせてくれたりもします。それとは別に、日本にもある、ボーイスカウトのグループでもよく、森へ出かけて行きます。
一方で、そのTV番組の中で、ローザンヌの大学病院の話でしたが、事故で脳をやられた患者のリハビリに取り組んでいる様子が映されていました。女医がインタビューに答えていて、彼女は、「脳をやられた患者程、さっさと、リハビリに専念すべきだ。」という考えを持っていました。
ゆっくり、ではなく、「出来るだけ、色々な五感に訴えることを患者に刺激させ、脳を活性化させて、回復を早める。」というのがそのやり方です。患者は、病室に置くのではなく、病院のテラスとかへ連れ出して、ハーブの匂いを嗅がせたり、犬が好きな患者なら、犬とボールに戯れさせたり、看護婦さんは、最低2人で、3~4人が付き添っている場面もあって、スタッフ総動員という感じでした。
つまり、彼女の結論を言えば、「自然の風や日光に当たらせて、五感から脳の刺激をもらうことが重要だ。」と言うのです。
今度は、事故で大けがをした2人目の男性のリハビリの様子が映像に残っていて、看護師が時にはテニスボールを握らせたりしながら、様々な刺激を与えているのが印象的でした。未だベッドに横たわっている時から、テラスへ連れ出していたと担当看護師が語っていました。
その男性は、今は普通に生活する程元気になっているが、最初は、記憶も失う程だったと言います。それが、思い出の写真等からも刺激をもらって、回復したというのです。
どういうやり方で刺激をさせるかは、各患者の関心などで異なるらしいのですが、ポイントは病室で寝たままにさせないことだと語っていました。
再び、場面が変わり、幼児の遊びに焦点が当てられ、TV番組の中で、「幼児期の子供は、なるべく外で遊ばせることだ。」、とある教授は話していました。「なぜなら、人間はそうやって、自然の中で、他の子供と遊びながら、脳の回路を形成して、情緒や心理的成長を促していくから。最近の子供にアレルギーが多いのも、自然に接する機会が少ないからだ。」とも話していました。
特に、携帯やコンピューターに触れる機会が多い今の子供には、肌で触れ合って遊んだり、自然の五感を使って遊ぶのが、如何にその後の成長に重要なのかが、この番組を見ていて改めて感じました。
人と触れ合う感覚を幼児期から育んでいかないと、肌間隔や人との距離感が分からず、精神が偏った犯罪にも繋がりかねないと指摘しています。
つまり、人間は、身体感覚と脳の発達を一緒に行って行くことで、人間らしさが機能するということです。
2020年のコロナ疫病は、人との触れ合いを奪い、世界規模の驚異的な出来事だっただけに、人間は社会的動物であり、人との関り無しには生きていけない、ということを改めて実感し、認識させられた年もありませんでした。
スイスジャパンサポート
近藤