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スイスの国際教育について~スイス・レザン市における、国際教育の研究

元桜美林大学教授、教育行政学がご専門だった桜美林大学名誉教授の吉田先生に、“スイスの国際教育について”、伺いました。

吉田教授は、自身のお子様が、このボーディングスクールを卒業され、更に、大学のサバティカルイヤーをレザン市で過ごされた経験をお持ちです。国際教育の研究をテーマに、スイスのレザン市で1年間過ごされた折に、*下記資料を記されました。
これは、日本のお子様をスイスへ留学される親御さん、つまり、私どものお客様にとって、大変興味深く、非常に参考になると思い、吉田教授の許可を得た上で、此処に、内容の一部を抜粋してご紹介させて頂くことになりました。

 

国際教育の原点としてのレザンの国際性

「レザンは、19世紀後半から20世紀中盤まで、結核の保養地として世界中から注目され、
多くの療養者と関係者がこの町で生活していた。その為、異文化を持つ人々がレザンにおいて日々交流し、豊かな国際文化が生まれていたのである。」
(p133、3.1国際教育の原点としてのレザンの国際性)

「LASが牽引してきた国際教育の原点ともいえるレザンの町が育んできた国際性とは何か。
(中略)多種多様な異文化間の尊敬の念や衝突と解決へ向けた調整などを経ながら、時間をかけて地域集団全体へ広がり、そして新たなコミュニティ文化が出来上がったものと思われる。」(p133~p134同上)

ここで教授は、異文化との共生は、100年も前から始まっており、世界中から来た患者、医療関係者、地元の関係者、
講演活動や芸術家活動にやって来た研究者やアーチスト等と異文化との共生空間が誕生し、新たなコミュニティ空間が出来上がった、と書いておられます。

 

International Baccalaureate Programme (IB)の概要について

「(中略)人間の最も多感でかつ成長が著しいと言われる中等教育段階で、生徒は、グローバル社会の縮図とも言われるレザンの町に
滞在する。その町では、様々な言語、文化、価値観を持つ人々がそれぞれの違いを認め合い、折り合いをつけながら形成してきた公共空間の中で、平和に暮らしている。

このレザンの持つ、国際性に抱かれながら、生徒は、異文化と共生するスクール・コミュニティの中で、学校が用意する国際教育を受ける。」(p134、3.2.1 International Baccalaureate Programme (IB)概要について抜粋)

IBプログラムとは何か。21世紀のグローバル社会に対応するための国際教育プログラムとして、日本国内でも注目を集めている。
国際的な教育プログラムの必要性は、人間の国際間の移動により発生したものである。特に、ヨーロッパのように、多くの国が一つの大陸に存在している状況では、家族帯同の移動などは頻度も高く、そのために子弟の教育をどう保証するかは大きな関心事となる。」
(p134,3.2.1同上続き)

このあと、吉田教授は、スイスには国際機関がたくさん存在するという事から、転勤者の子供が受ける教育背景を指摘している。
その中で、西村俊一氏が、「IBが出来上がる発展段階には、ヨーロッパ共同体(EC)のEuropean Baccalaureateがあることを挙げており、1963年にスイスで、国際バカロレア成立準備期から、実験期、実行期を経て、今日の様な形に出来上がった。」と述べていることを紹介している。
また吉田教授は西村の「元々、国連本部や欧州本部スイスに勤務する国連職員の子弟が通うインターナショナル・スクールの教員たちが中心となり、国際学校において共通の現代史を教える研究会が開催されている。」にも言及し、「1968年にInternational Baccalaureate Organization (IBO)機構が設立された。」と述べている。

グローバル人材育成の経路-国際理解教育

「(略)スイスは、国際教育のメッカとして100年以上にわたり、世界中を魅了し続けてきた。周知の事実として、イギリスやアメリカをはじめ、日本にも私立の全寮制学校はいくつもあるが、それらは現地の教育サービスの文化を強く保持しているという点において、スイスの国際全寮制学校とは異なる。いずれも、それぞれの国内トップレベルの大学への進学を第一目標にした教育サービスが中心である。

(中略)世界は一気にグローバル社会へと変貌してしまった。(中略)時間的にも歴史的にも長い射程距離を持つスイスの国際教育が、必ずしも日本のこれからの国際教育に適合するとは言えないが、その視野を広げてくれることは確かである。(中略)レザンの国際性とこれを原点とする国際教育、そしてその象徴としてのIBプログラムが、日本のグローバル人材育成に向けた試みに示唆してくれる点は何か。

(中略)日本の学校教育においては、外国を知る、異文化を学ぶという国際理解教育がその中心であった。(中略)異文化に触れることが中心の体験学習という側面が強く、自国文化との違いを認識することに終始した。

(中略)従って、世界の人間社会における普遍的な価値観で個の成長と人間社会の発展との関係性に留意した教育とはならなかった。この意味において、日本の国際理解教育は対症療法的であり、あくまでも「受け身」の学びであったと言える。(中略)これまでの「国際理解教育」から「国際教育」へ移行することが必要だ。

世界標準としての「国際教育」へ

「LASの国際性は、To develop innovative, compassionate, and responsible citizens of the world.である。生徒は、教科や教科外での学びにおいて、主体的、創造的に思考し、行動に移すことを奨励され、共生する異文化空間のなかで、他者に対する思いやりを持って行動するように導かれる。
“多文化に対する理解と尊敬を通じて、平和でより良い世界の実現の為に貢献する、探求心、知識、そして思いやりのある若者を育成する”というIBプログラムのミッションに通じるものである。受け身の学びではなく、実際の行動を通して社会に生きる人間としての力を育成するということである。」(p140 4.2)

 

*参考資料:
「スイス・レザン市における国際教育の研究」桜美林大学教職課程年報第9号、
pp.125~143,2015年 3月 吉田 恒

 

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