先日、スイスに学校見学へいらっしゃったお母様との会話がとても印象に残っています。
「今の日本の教育で大丈夫なのでしょうか。子どもの“好き”や“得意”はちゃんと大切にされているのでしょうか」そう語られる姿を前に、私自身も改めて教育とは何かを考えさせられました。
ここスイスの教育は、低年齢の頃から「学び」と「生き方」が結びついています。その背景には、教育改革者ペスタロッチの思想があります。彼は「Head(頭)・Heart(心)・Hand(手)」をバランスよく育む全人的教育を提唱し、学力だけでなく人格形成や実践力を重んじる文化を築きました。この考え方は現代のスイス教育にも受け継がれています。
高校生になると、大学進学だけでなく職業教育という実践的な道も選べる仕組みがあります。子どもたちは「どんな人間になりたいか」を考える時間をとても大切にしています。自分の言葉で考え、未来を主体的に描くための時間です。学歴や序列で人を測るのではなく、一人ひとりの選択が等しく尊重される環境、これは子どもにとって大きな安心と励ましになっているように思います。
また、スイスならではの「多言語の環境」も、子どもたちにとってかけがえのない財産です。フランス語又はドイツ語+英語を生活の中で自然に使い分ける経験は、世界を広く感じさせ、将来の進路やキャリアの可能性をぐっと広げてくれます。
そして何よりも印象的なのは、子どもたちが自分の選んだ道に自信を持って歩んでいく姿です。周囲の大人たちは「その子がどんな未来を描きたいのか」を尊重し、応援しています。その温かさが、自然と子どもの自己肯定感を育てているのだと感じています。
日本でも『正解の道』は一つではないはずです。子どもが自分の未来を自信を持って選び、歩んでいける教育とは何か。スイスの事例は、教育に悩むすべての親に、その問いに向き合うヒントを与えてくれるのではないでしょうか。