私の好きなポッドキャスト(インターネット)番組に、森部一樹のグローバル・マーケティングという番組があります。私は、以前、社会人のMBAコースで、マーケティングを専攻したこともあって、この番組を興味深く聞いています。国内ビジネスではなく、海外へ進出する日本企業向けに特化した、グローバルマーケティング戦略について、色々な角度から毎回話されています。
番組では、ここ20年来、日本企業が中国や韓国に先を越され、シャープや三洋が買収されてしまった理由、なぜ今、日本企業は以前の勢いが無くなり、グローバル化戦略が他の先進企業と遅れを取っているか等、が語られています。
この番組の森部氏は、大方、日本企業は、メイドインジャパンのこれだけ良い品質なのだから、売れるはずだ、と品質重視に陥り、セールス市場をそれ程考えずに売ろうとしてきた結果、新興国のコモディティ化の波に押され、かといって、ドリームプロダクトでもない、中途半端なポジションにより、衰退してきてしまった、と分析しています。
これを聞いて、私が思ったのは、まさに、日本人の”井の中の蛙”という視点です。日本の内側の市場からしか海外市場を見ていないので、日本製という今までの、経済が右肩上がりの思考パターンのままで、品質重視だけを常に考えて生産販売してきたわけです。
典型的な例が冷蔵庫です。日本の量販店で、日本製冷蔵庫がずらりと並んでいるのを見ると、細かい機能の部分で、他のメーカーと凌ぎを削っています。こういった家電製品は、海外の新興国の中流の人達には、必要ないと思える機能が沢山ついていたりします。
つまり、日本人が求めている製品と彼らの欲しい製品が異なるという視点に気付かずに、自分たちの視点だけで生産して来た為、隣国の国々がどんどん海外進出し、日本を追い越して来たと、番組では説明していて、私も同感です。
この場合、もし、日本人が世界から日本市場を見る視点というものを持っていたなら、日本経済も今ほどには衰退してこなかったでしょう。日本人の海外マーケティングの弱さが、経済の減速を与えてしまいました。
しかし、海外へ留学によって、世界から日本を見るというグローバルな視野を持つことは可能なのです。世界の動きが分かることで、外から客観的に日本市場を、そして、自社のポジショニングが出来さえすれば、日本企業はもっと海外進出をうまく手中に収めていくことが出来ると思います。
例えば、これは、海外の寿司和食レストランでも同じことが言えます。
海外へ寿司和食レストランを出店したい日本人の多くが、「本当の日本の寿司を食べてもらいたい。」と言ってこだわります。もちろん、その国に日本人がたくさん住んでいて、その人達をターゲットにするのなら、構わないと思います。
しかし、お客の殆どがローカルの場合、あまりに日本人の味や素材に拘る必要はないと私は思います。なぜなら、彼らは日本人の様な味覚や想像力では来ないからです。大事なのは、その土地の人達に合った(欲するもの)を提供できるか、つまり、ローカルの視点で見たマーケティングが重要ということです。
まさに現地での海外マーケティングをしっかりやらないと、日本の味ばかりに拘った挙句、材料費ばかり加算で、ローカルの人の傾向とは異なって、結局破産に陥ったりするわけです。
韓国や中国が勢い良く、日本企業を凌いだ一つの理由も、やはり、社員を海外へ研修に行かせ、現地に住まわせたり、留学をさせたり、あるいは留学経験者を採用させてきたからです。日本企業は、不況期の失われた20年後、リスクを取ることをあまりせず、安定志向で、少額投資しかしてこなかった背景から、益々、大きな利益を生み出す革新的な新製品からほど遠くなってしまった様です。
留学=英語を理解する為、のみならず、世界から日本を見れる視野を養い、様々な国民と触れ合うことで、そのコミュニケーション能力向上と戦略的思考、そして強い意志を貫く、といった様々な利点があります。
英語そのものは、道具に過ぎないので、こういうことからも、特に経営者のお子様には留学の重要性や必要性を感じずにはいられません。
ビジネスの世界で同じ土俵に立って戦えること、これが将来の日本の子供達や若者に必要なことだと、私は海外に住みながら、強く感じています。