<日本だけではない、学校卒業後の進路に戸惑う若者たち。>

日本の”引きこもり”は、ご承知の通り、大きな社会問題で、若者に限らず、中年にまで及んでいます。ある知り合いのドイツ人が、日本の引きこもりについて書かれたドイツの記事を送って来て、日本人15~39歳の約54万人が引きこもり(2018年)、という数字には唖然としました。

    http://www.spiegel.de/gesundheit/psychologie/hikikomori-wie-junge-japaner-das-leben-aussperren-a-1202103.html ドイツ語シュピーゲルの記事(2018年)

https://www.nippon.com/en/currents/d00332/ 日本のニュースについての英語の記事(2017年)

 さて、スイスの現地新聞に、最近の若者の様子を書いた本についての紹介がありました。今や、若者の行動は、日本に限らず、先進国でも類似した現象がみられる、ということが言え、興味深い著者のインタヴュー記事を以下要約してご紹介します。

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 科学ジャーナリストのウルリク・バートロモイスさんは、18歳の娘が、学校を卒業し、これから素敵な未来が待っているというのに、部屋にこもりっきりになり、人生何をしていいかわからない状態だったのを見て、そんな保護者向けに、本を書きました。

学校を卒業したのに、将来の計画ゼロという若者がいます。多くの若者はブロック状態で、心配から間違ったことを決定したり、ネットフリックスにふけったり、科学者はそれを選択パラドックスと呼んでいます。

-これは贅沢な問題でしょうか?

子供達は、今まで学校生活で、毎日の日課の中で暮らしていました。ソーシャルメディアが全盛期で、すべてが手に入ります。でも、学校が終わってしまうと、突然、穴が開いた状態になるのです。

-若者は学校卒業後、世界を旅行することも出来ますよね?

多くの若者にとって、家が快適なので、全然旅行したくないのです。

-今の若者はひ弱になっているのでしょうか?

それは言い過ぎだと思います。たぶん、多くの若者に欠如しているのは、”やり抜く力”だと思います。退屈を我慢したり、歯を食いしばって、やり通すとか、批判の中をうまくやっていくのは、大変なことです。それが出来ない理由というのは、ヘリコプターピアレンツと言って、”子供の前に立ちはだかる問題をすべて取り除いてしまう親がいる”からです。その為、未熟な若者は、自分を信頼出来なくなる。

-今の18歳は、20年前より未熟だと言っていますね?

まず第一に、思春期が始まる時期が早まっています。また、若者が精神的に成熟するまで、昔よりも時間がかかります。たぶん、脳で、理性的な回路が出来上がって発達が終わり、制御や計画を管轄出来る様になるには、25歳までかかると思います。自分探しが(昔よりも)拡張されました。

-親も子供が自分で決断するのに辛抱強さにかけています。学校での勉強の代わりに、いつ人生の学習が始まるのでしょうか?

それが問題なのです。ほとんどの中流家庭の親は、子供に過度な期待をかけ過ぎています。子供が道を外れるのではないか心配です。”子供そのものがプロジェクトになり、一種のステイタスシンボルです。あるいは、親が子供の人生の方向を決めようとしたりすることもあります”。

-学校生活の後、リラックスするのは悪いことでしょうか?

3か月なら問題ありません。コンフォートゾーンから出て、仕事をする、ボランティアをする、祖父の世話をする、旅行する、と色々な選択がありますが、”悪いのは、心理学者も言っている様に、全く何もしないことです”。この年齢なら、脳が素早くネットワークをキャッチして、インプットが来るのですから。

-多くの親は子供を助けてあげたく、職業見習いとか、勉学の場を提供したり、、良い戦略を与えますよね?

いや、アクションが欠けているのです!若者は、見習いをするとか、大学に行って勉強するなりを見つけるべきです。”多くの親は、たずなを放すことが出来ません”。ある大学教授が言っていたのですが、驚いたことに、数人の保護者が面談の依頼をしてきたらしいのです。つまり、”大学生になっても、未だ子供の面倒を見続けるという、その監視塔を辞めるべきです!”

-もし、子供のエンジンが未だかかっていなかった場合に、親はどうすべきでしょうか?

”締め切り日をセットすべきです。「秋までそうやっていてもいいが、それ以降は自分で責任を持ちなさい。」と”。

多くの家族がそう言うことが出来ずに、ただ黙って見守り、じっと期待しているだけなのです。それでは、何も起こらないのです。

-それで、親は神経質になっていきます。

時間が経つにつれて、学校への費用で経済的にも負担が増えてきます。

-ブーメランキッズと言って、研究や職業訓練は、結局途中で辞め、親元にまた舞い戻って来るのです。

 そういった子供たちは、様々な大学の勉強やら職業を途中で辞めたりして、履歴書に書き込みます。それは特に悪いことではないと私は思います。40半ばで間違った決断をするよりは、若いうちに間違った決断をした方がいいからです。

-本の中で、退学した若者について書かれています。

やる気がない若者もいるし、別の子達の場合、ソーシャルメディアがあっても、人と関わらない。ここで、印象的なのは、”子供は何か自分に合っているものを見つけた途端に、素早くスイッチが入り、始め出すのです。たぶん、それは、内面的な制御の欠如というか。自分が大きな影響を受けて、信頼する人、つまり、彼らは自分の中でその人のことを考えるという人が身近にいないからです。「もし、あの人が私だったら、どうするだろうか?」と内面的に道を教えてくれる様な人です”。

私見:

このインタビュー記事を読んで思ったことは、高校卒業後、あるいは、大学卒業後にしろ、若者が未だ何をしていいか分からないうちは、まずはアクションを起こしてみることが重要だと、改めて感じたことです。それを糸口にして、自分が一体何をやりたいのか、が見えて来るからです。

ひと昔前の本に、「何でも見てみよう。」小田実の本がありました。それを読んで、海外へ旅に出たものです。私もその一人でした。

 結局、親が何でもやってあげてしまうのは、自立を妨げる、逆効果ですね。

スイスジャパンサポート 近藤

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